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女性専用車両について‐男性も乗れる「女性専用車両」は果たして効果的か

 男性も乗れる「女性専用車両」は果たして有効的と言えるのか。
 まず、「女性」専用車両でありながら、小学生以下の「男性」(=男児)や、身体の不自由な「男性」とその介護者の「男性」も乗ることができるという見解を示す鉄道事業者は多く、この場合明らかに「女性」専用車両という名称に見合っていない。また、性同一性障害者などの身体的に女性でない人の乗車についても自己申告で乗車できるとしているとの見解を示す鉄道会社も多いようである。その他にも、性別の判断がつきにくいような人も数多くいるはずだ。だとすれば、害さえなければ性別が男かどうかは問題ではないということになるのであろうか。そうなれば今度は、果たして「女性」専用車両にはどんな人が乗っていいのかということになる。
 実際にはこれはあくまで「任意協力」であり、誰もが乗る「権利」を持っている。憲法では男女平等が定められているため、公共交通機関は「性別」によりどちらか一方の性だけを強制的に排除する車両をつくることができないのである。(現行の女性専用車両に鉄道営業法34条2号の適用は想定されていない。)そのため、「女性専用車両」という名称であっても、強制的にそこから男性を追い出すことはできず、それをしようとすれば逆に法的制裁を受けることになる。
 
 また「女性専用車両」を設けたことによって「全ての女性」が女性専用車両に乗るかと言えばそうでもなく、痴漢の被害に遭った際にその旨を鉄道会社や警察官に伝える際に、事情などお構いなしに「女性専用車両があるのに一般車両に乗ったのはなぜか」と問われる可能性もある。これでは、女性の痴漢を防ぐために女性専用車両を設けたにも関わらず、鉄道会社や警察官の「事なかれ主義」に利用されてしまう場合もある。
 とはいえ、多くの男性が女性専用車両に乗る権利を堂々と主張し、完全に「女性専用車両」が有名無実化してしまうということがなければ、「女性専用車両に乗っている女性」に関しては、痴漢防止や男性からの回避としてそれなりに効果を発揮するであろうし、不必要なわけではない。ただ、ラッシュ時における混雑の緩和が大前提にあった上で、更に監視カメラの設置がなされることも必要である。女性専用車両だけでは問題は解決しにくい。そのため、無いよりはマシだが、根拠のない空気感、マナーなどという実に曖昧なものによってかろうじてそれも維持されているだけであり、より効果的な対策が必要であるだろう。

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