子供は一切選択肢を与えられず、親の勝手な判断によって、この世に強制的に誕生させられることによって誕生する。つまり、子供が「誕生した」責任は親にある。しかし、親がそのことに対して責任を果たすことは不可能である。
子供が幸福になれるように「頑張る」ことによって責任を果たすことができると思っている親も多いだろう。しかし当然のことながら、親が頑張ったところで子供が幸福になれるとは限らないし、幸福な経験をしたとしても、不幸な経験を踏まえた上で「生まれない方がよかった」と思うことがあるかもしれない。また、いくら幸福な経験をしたとしても、最終的に人間は死ぬしかない。そして、親が子供の代わりに不幸な経験をしたり、代わりに死ぬことはできないし、それが可能だとしても、いつ人生を終わらせるかという問題は残り続ける。
結局のところ、「誕生した」という事実を消すことができない以上、程度の差はあれ、親は子供が幸福になれるように「頑張る」ことしかできず、責任を果たす手段は、子供が「誕生した」時点でもはや残されていないのである。